かつて日本の学生にとって、将来の道筋は比較的明確でした。しっかり勉強して名門大学に入り、大企業に就職する——これが安定したキャリアへの王道とされてきました。
しかし現在、社会や経済の変化によって「卒業後に必要とされる力」は大きく変わりつつあります。その中でも注目されているのが 金融リテラシー（お金の知識と活用力） です。
貯蓄、投資、ローン、保険といった日常的な判断から、将来の資産形成まで、金融リテラシーは人生を左右するスキルになりつつあります。本記事では、その背景と若者に求められる理由を見ていきましょう。
金融リテラシーが重要視される背景
日本は少子高齢化が進み、年金制度や将来の生活費に不安を抱える若者が増えています。さらに、物価上昇や社会保障費の増加により、「給与だけに依存する」生き方は以前よりもリスクが高まっています。
金融広報中央委員会が実施した「金融リテラシー調査（2022年)」によれば、若年層の金融知識・判断力の正答率は他の年齢層より低く、金融教育の経験が十分ではないことが明らかになっています。
デジタル金融サービスの拡大
近年、金融リテラシーの必要性を加速させているのが デジタル金融サービス の広がりです。フィンテック企業の台頭により、スマートフォン一つで投資や取引を始められる時代になりました。
たとえば plus500 のようなプラットフォームでは、世界の金融市場にアクセスでき、さまざまな金融商品について学びながら取引を行うことが可能です。若者にとっては大きなチャンスである一方、リスク管理や分散投資の知識がなければ危険な選択にもなりかねません。
「お金を語る」文化の変化
日本では長い間、「お金の話は避けるべき」という文化が根強くありました。そのため、多くの家庭では金融教育が十分に行われず、銀行預金一択という考え方が一般的でした。
しかし、超低金利時代が長く続いた結果、預金だけでは資産を増やせないことが広く認識されるようになっています。株式や投資信託、さらにはESG投資など、新しい選択肢を積極的に学ぶ若者も増えています。こうした文化の変化が、金融リテラシーの必要性を後押ししています。
大学・企業による取り組み
一部の大学では、キャリア教育の一環としてパーソナルファイナンスや投資の基礎を学ぶ講座を導入しています。さらに、企業側も社員が金融知識を持つことでストレス軽減や生産性向上につながることを認識し始めています。
金融庁が公表する「金融経済教育について」の政策／制度設計に関する情報によれば、国として学校教育での金融経済教育を体系的に強化しようという動きが進んでおり、教材の作成・教員向け研修の実施なども含まれています。
グローバル経済で生き抜く力
日本の若者は今や国内だけでなく、海外企業でのキャリアや海外移住も視野に入れています。そのため、為替、国際市場、経済政策といったグローバルなお金の動きに対応できる知識が不可欠です。
世界的な出来事がどのように個人の資産や生活に影響するのかを理解することは、国際社会で活躍する上での競争力にもつながります。
金融リテラシーは「生きる力」
給与水準の停滞や老後資金への不安といった課題は確かに大きいですが、金融リテラシーを身につけることでそれらを乗り越える可能性は広がります。
お金に関する正しい知識と判断力は、単なる「知識」ではなく、人生を切り開くための「生きる力」と言えるでしょう。
新しい時代を担う日本の新卒世代にとって、金融リテラシーはキャリアや生活を支える基盤となるのです。
